緩く淡く

読書日記

3月24日

・コロナショックは医療と経済の複合危機。需要が瞬間蒸発。衝撃度は、リーマンショックを上回る。観光への打撃、金融市場の混乱、生産・消費活動の停止、五輪の延期。

 今回のショックが社会変革につながるか。ショック収束後、個人の行動の変化を肯定的に受け止められる社会や企業の土壌があるか。案外、元に戻したいという欲求も大きい気がする。

・豪州の競争当局、恐れられている。

・コーヒーかすで霜害抑制。フロストバスターなる商品。kurei 

・ドル需要は間も無く一服する可能性。

・「画家のまなざし」が本日も素晴らしい。絵の見方ではなく、感じ方に関する解説。

オーバーストーリー

私は柴田元幸先生の大ファンなのだが、リチャード・パワーズの「舞踏会に向かう三人の農夫」は、分厚さに加え二段組ということもあり、ずっと積読状態であった。

 

パワーズに関する評判はいうまでもなく、いつかは一度読んでみたいなと思っていたところに、標題作がピューリッツァー賞を受賞し、直ちに日本語に訳されたと聞き、「舞踏会」に向かう前のエクササイズだと思うことにして、同書に負けず分厚い本書を手に取ったのであった。

 

オーバーストーリー

オーバーストーリー

 

 

根負けしそうになりながら、がっぷり四つで毎日少しずつ読み進めていったが、幸い途中で放り出そうという気は微塵も起こらなかった。

 

環境破壊をテーマに、色んな意味でのラディカルさを持つ登場人物たちに、それぞれの人生において森や木が持つ意味を語らせる。木の根が一つの幹に通じているような部分もあれば、全く関連性がないようにみえる部分もある。

 

個人的には、まずニック・ホーエルの先祖が植えた栗の木が受け継がれていく様を淡々と描く序章がとても好きだった。

また、ウェスターフォード博士がみせる森や木に対する洞察力は、フィクションというよりは良質なエッセイという感すらあった。

ブリンクマン夫妻のエピソードは、本書では若干特殊にみえる。しかし、故障と修復を繰り返す夫婦関係を、最後に真のものとしてみせる描写がとても素晴らしい。

 

博覧強記のパワーズの手になるものゆえ、本書でも、植物学だけでなく、様々な専門分野の様々な用語が駆使され世界が作り上げられている。

訳者はきっと大変だっただろうと思う。

しかし、この作品は、訳者の投じたエネルギーを何倍にも増幅させる形で読者により咀嚼されるだろうと思う。私も、喉につっかえそうになりながらも多いに楽しんだ。